どうも村田です
ユダヤ人たちは
文字通りの難民で
あり、
要するに欧州、
ヨーロッパの戦乱を
逃れてきただけだから、
ビザもパスポート
というものを持って
いないのだ。
ところが3月のソ連と
満州の国境の寒さ
というのは、
土地柄だけにこれは
大変なもので、この
国境の町に到着した
ユダヤ人たちは全員が
凍死、凍え死ぬという、
それから食べ物も十分な
ものがなくて
衰弱して死ぬという
危険にさらされていた
のだ。
そのユダヤ人の難民に
人道上の立場から満州への
入国を認めて、それが
樋口中将だったのだ
が、かつその国境から
ハルビンまで特別列車を
仕立てて、
ユダヤ人難民たちを
ハルビンまで迎え取った、
これが樋口季一郎中将が
その時に取った緊急手段
だったのだ。
この時、樋口は関東軍の
特務機関長として、
満州国の政府に対して
ある程度の影響力を振るう、
そういう力を持っていたのだ。
その権力をこの時ばかりは
十二分に活用して、満州国
の独立国家としての外交
政策を動かすことができた
のだ。
もう1つ付け加えておきたい
のが、この樋口中将の独走
とも言うべきユダヤ人難民
を救済する冒険的試み、
これを当時満州の
関東軍参謀長として任務に
就いていた東條英機中将が
大きく支持をしていた
ということなのだ。
東條は樋口の人道的な
措置を良しとして、そして
一方で外務省や陸軍省が
同盟国のドイツからの抗議に
気がねして、
そのユダヤ人難民を
そのように優しく扱う
ことはないのだという
ような指示をしてきたのを
頑として受け付けないのだ。
こういう形でユダヤ人難民
を救ったのだ。
さらにその時、満鉄総裁
の地位にあったのが
松岡洋右（ようすけ）
なのだ。
松岡洋右（ようすけ）
は樋口中将の要請に応えて、
ソ連と満州の国境から
ハルビンまでの、これは
約900キロと計られているが、
900キロの距離に難民救済
のための
運賃無料の特別列車を
仕立てて走らせてやった
のだ。
つまり、この時、
同盟国ドイツの思惑にも
かかわらず、ユダヤ人の
難民を助けた日本の官憲で、
大いに力を振るった
3人の将軍がいたわけなのだ。
松岡は文官であり
樋口中将は昭和13年の8月
に参謀本部の第2部長に
栄転して、満州を離れて
帰国するのだ。
その時にそのソ連と
満州の国境、満州側では
満州里（マンチュリー）
からハルビンへ、そこから
長春、奉天、錦州を経て
天津、上海へという、
これを樋口がユダヤ人
難民を救ったルート
であり、樋口ルートと
呼ばれたのだ。
その樋口ルートを守る
ことを、樋口は大連
特務機関長の
安江仙弘（のりひろ）
大佐に依頼して任地を
離れるのだ。
この樋口ルートは結局、
昭和16年の6月にドイツと
ソ連の間に戦争が始まる、
独ソ開戦、その時までは
とにかく有効で、この
ルートによって
自由主義世界への亡命を
果たし得たユダヤ人の数は
はっきり分からないけれど、
約2万人と推計されているのだ。
それだけの多くの
ユダヤ人が樋口季一郎中将、
それに東條英機が協力して
開いたルートでもって、
とにかくナチスの手から
逃れ得たのだ。
東條は昭和12年の8月、
関東軍の参謀長として
新京、長春にいたけれど、
満州国の首都、長春が
満州国の首都になった
ものだから、
新しい都という意味で
新京と呼ばれるように
なったわけなのだ。
その時にチャハル作戦と
呼ばれる実戦の指揮を
執ることになるのだ。
そこで出征いたしたのは、
東條兵団と呼ばれている、
正式の名前は関東軍
チャハル派遣兵団と
言ったのだが、
約2万人の将兵を率いて
張家口に向けて進軍する
のだ。
これが東條が初めて
実戦の指揮を執った経験
であり、
またこれが最後の機会
であるのだ。
つまりこの時、東條は
長い間陸軍の将官で
あったけれど、
実戦の指揮を執った
ということは、この短い
期間の一度しかないのだ。
終始優勢のうちに軍を
進めて、9月の半ばに
中華民国軍が退去した
後の大同という町を無血
占領することで、この
短期間の作戦が終わるのだ。
9月22日に東條は後任の
司令官に後を譲って
新京に帰ってくるわけ
なのだ。
このように短期間、
実戦経験を持った
ということは、
それが非常に短期間に
目的を達成したという
ことで、
東條の武名、陸軍の将軍
としての武名は上がるのだが、
この実戦経験がこの成功
した短い作戦のただ一度
限りということが、
あるいは彼の戦争観に
一種の影響を与えたかも
しれないのだ。
続きは次回だ
今日はこのくらいにしといたる