どうも村田です
明石工作をする時、
どういう困難が
あったか
ということなのだが
承知の通り、ロシア
とは今もだが、
防諜(ぼうちょう)
というか、カウンター
インテリジェンスが
非常に盛んで、
少しでも外国人が
ロシア国内で不審な
動きをすると、
公安警察、秘密警察が
目を光らせて尾行監視
するのだ。
世界で有数のカウンター
インテリジェンスを
やっているのだが、
特に日露戦争の前後に、
明石の行動は全面マークを
されていたわけなのだ。
オフラーナという
公安警察があるのだが、
アバズレーエフという仮名、
ロシア風の名前を使って、
ストックホルムを本拠に
ベルリンやパリ、ロンドン
などヨーロッパ各地を
訪問しては、
反ロシア勢力の革命家や
独立家に資金や武器を
提供して、
ロシアの対日戦争の
指導に揺さぶりを
かけたわけなのだ。
例えばこういうことも
やっているのだ。
スイスで大量の武器を、
1万6,000丁の小銃を
購入しまして、
バルト海沿岸から、
ロシアの社会革命党
エスエルという
一番過激だった
グループに引き渡したり
しているのだ。
輸送のために
わざわざ蒸気船を購入
して、クラプトン号
だったか。
それから黒海と
バルト海を通じて
反体制派に武器を供与
しようとして、
オランダから船を
バルト海と黒海に
動かして供給しようと
したのだ。
そのうちの1つとして、
エスエルは、明石から
頂いた武器を使用して
テロを起こして、
オフラーナのボスというか、
プレーヴェという内務大臣
もこのテロの犠牲になって
いるのだ。
当然こういったロシア
国内外での明石の活動
については、
ロシアの公安警察
オフラーナをはじめ、
各国の秘密警察から
監視されて、
ロシアでは明石の
情報提供者3人が逮捕され、
あるいは不明となった
ということがあるのだ。
ここで強調したいのは、
明石もそれに気付いて
慎重に行動していたのだ。
このロシアが
オフラーナを使って
徹底的にマークしていた
という、
厳重監視していた
ということを、戦後、
最近でも、厳重な防諜
(ぼうちょう)を
していたということを盾に
「明石の工作はすべて
見抜いていた。
結果において明石工作は
何の効果もなかった」
というような
プロパガンダをロシアは
盛んにしているのだが、
ここで強調したいのは、
明石もそのオフラーナの
動きを見抜いて慎重に
行動していたということ
なのだ。
これは今申しあげた、
革命勢力に武装蜂起を
展開するため、
2万4,500丁の小銃と
430万発の弾薬を
スイスで調達して、
オランダの
ロッテルダムから
黒海とバルト海へ
運んだのだ。
バルト海に送った
1万6,000丁のうち
約半分は船の座礁で
没収されたのだが、
残りは革命分子に
渡ったということなのだ。
最近
「この半分、1万6,000丁
のうち8,400丁は座礁して
使えなくなったから、
これは失敗に終わった」
というように、
ここの部分だけを
捉えて
「この武器を送った
ことも失敗だった
のではないか」
と言う人が出てきている
のだが、半分は実際に
革命分子に渡った
ということは、
やはり明記しなければ
いけないことでは
ないかなと思うのだ。
それで
「明石工作は失敗とする」
という、こういう否定的
な研究が、
日本を中心に、そして
北欧、ロシアに蹂躙
されていた
フィンランドや場合に
よってはエストニア
あたりの研究者の間で、
こういうような結論を
導いているのだ。
「ロシアが厳重監視していた」
ということを根拠に、
明石工作は効果がなく
失敗だったというふうに
言っているのが、
この『明石工作』
という本をお書きに
なった稲葉千晴さん
という名城大学の先生
なのだが、
これはかなり否定的な
意見がここで広がって
いて、
その内容というのは、
反ツァーリ、つまり
反皇帝派、反体制派、
ロシアの反体制派の
統一戦線構築、
つまり糾合することが
未完に終わった、
そして武装蜂起の
計画自体が挫折した、
つまり失敗した
ということになって
いるのだ。
この研究というのは、
北欧の研究者との
共同検証で、
共同で行ったという
ことなのだが
この『明石工作』
の本の中にはこう
書いているのだ。
「明石が行った
反ツァーリ抵抗諸党
への援助は、
1905年革命に
政府弱体化に
ほとんど影響を
及ぼしていない。
そして日本の勝利とは
全く結びつかなかった」、
こういうふうに断定
されているのだ。
こういった研究は、
研究自体にはケチを
つけるつもりは全く
ないのだ。
それはそれとして
尊重させて頂きたいと
思うのだが、
謀略の成果があった
のか、なかったのか
という検証作業は
非常に困難が伴うと
思うのだ。
それはなぜならば、
「全く勝利に結びつかなかった」
ということを断定的に
述べるというのは注意が
必要だと思うのだ。
続きは次回だ
今日はこのくらいにしといたる