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読み取ることが重要なんじゃ

どうも村田です

古典書を読むことが

できない大衆であっても、

絵巻物を通じて歴史の

物語を共有することが

できたのだ。

彼は、映画もまた

同様の役割を果たす

べきものであると強く

主張しているのだ。

清水の指摘のなかで

鋭いのは、カラー映画に

対する評価であるのだ。

当時のカラー映画は

まだ発展途上で完成度

が低いと述べているのだ。

「 モノクロ映画の

完成度には達していない」

という見解は、一定の

妥当性を持つものといえる

のだ。

清水は理想とする

日本の姿を明確に描く

ことはできなかったものの、

新しい媒体やメディアの

なかに、なにか復活させる

可能性があると考えていた

のかもしれないのだ。

清水が徹底的に調査した

のは、基本的に文書である

のだ。

彼は文章を読み、その

背後にあるものを

読み解こうとしたのだ。

現在ではあまり注目

されないが、ヨーロッパ

では戦後、

とくに1960~70年代に

かけてアナール学派と

呼ばれる歴史学の潮流が

生まれたのだ。

これは簡単に言えば

民衆史であり、

マルクス主義的な階級史観

を超えた新たな歴史観である

のだ。

例えば、中世の教会に

残されたさまざまな文書

や民話などを通じて、

当時の人びとがどのように

生き、どのような世界観を

もっていたのか

そういったものをたどる

という手法によって歴史研究

が起こったのだ。

清水はある意味で、

上述の歴史研究を先取り

しておこなっていたのだ。

彼のこの研究は、戦後の

歴史学にも明らかに

受け継がれているのだ。

しかし、その過程で

歪められた部分も存在する

のだ。

その点については

彼の研究には当時としての

新しさがあり、とくに

彼の映画に関する考察

にはそれが色濃く表れて

いるのだ。

古代のほうを中心に

解説してきたが、

『素描 祖国の歴史』は、

江戸時代までを詳細に

記述しているのだ。

しかし、当時の歴史観の

限界も見られ、とくに

江戸時代については

非常に抑圧的な時代

として描かれているのだ。

中世においては自発的

な農村共同体が一定の

保護を受けていたが、

江戸時代に入ると

民衆の世界は強く抑圧

されたものとして表現

されており、

この点は現在の研究から

みると、やや古い解釈で

あるといえるのだ。

どのような人物であれ、

時代の制約から完全に

逃れることはできないのだ。

重要なのは、近代知識人

としての清水が、一時は

マルクス主義に傾倒

しながらも

日本へ回帰し、独自の

視点を築いた点である

のだ。

しかし、彼の著作に

ついて論じる際には、

当時の時局に便乗したもの、

あるいは書かされたもの

であるとする指摘が必ず

なされるのだ。

このような見解は、

著者の意志を軽視する

ものであり、

一冊の本を執筆するという

行為の本質を理解していない

のだ。

もちろん、時代の情勢が

作品に影響を与えることは

避けられないが、

それだけで評価を

決めつけるべきではない

のだ。

清水自身、日本の敗北を

望んでいたわけではなく、

そういう点での誇りを

記そうとしたことは明白

であるのだ。

さらに言ってしまえば、

戦う人びとに対する餞は

なむけの言葉を贈りたい

という思いもあったで

あろう。

しかし、それは“ 強制”

とはまた異なる問題

であるのだ。

当時、時局に便乗し、

政府の宣伝のような内容

を書いた刊行物も存在

したが、

そうした作品は現在では

読むに耐えないほど浅薄

なものであるのだ。

それに対し、清水の著作

にはそれを超えたものが

あるのだ。

「素描 祖国の歴史」

から伝わるものを考えれば、

無理やり書かされた、

あるいは左翼から右翼へ

転向したといった単純な

言葉で片付けられる

ものではないのだ。

清水が日本の農村や歴史

を必死に見つめ直そうと

した際、

彼が当初は共感を抱いた

マルクス主義では日本を

理解することができなかった

のだ

そういったところから、

日本をわかろうという

想いをもつこととなり、

彼がどれほど思想的に

努力したかを本書から

読み取ることが重要である

のだ。

それを見落とせば、

清水に対して気の毒で

あるのみならず、

われわれ自身が歴史から

学ぶものを大いに損なう

ことになるのだ。

続きは次回だ

今日はこのくらいにしといたる

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