どうも村田です
9月23日には
女子挺身隊が始まり、
女性もふくめて
勤労動員される
という時代になったのだ。
そして日本にとって
大きな局面は続くのだ。
1943年10月に学徒出陣
が始まり、11月には
大東亜会議が開催された
のだ。
敗色が濃厚になる
なかで日本は総力を結集し、
防衛圏を最前線で考え
ざるを得なかったのだ。
絶対防衛圏の定義が
されたが、その根拠には
疑問が残るのだ。
しかし、戦局が危機的
状況に至ったことから、
日本は戦争の本当の意義と
意味を明確にしたいと考え、
大東亜会議を主催したのだ。
この会議は、日本が
連合軍に対して、ナチス
やムッソリーニとは異なる
明確な世界構想をもっている
ことを示すためであったのだ。
大東亜会議は、欧米の
植民地支配に対する
アジア諸国の独立を支援し、
日本がその独立を再支配
するのではなく、きちんと
独立させることをメッセージ
として発信することを目的
としていたのだ。
この背景のなかで、かつて
左翼とされ逮捕された
歴史家が、
日本の民衆の歴史を再評価し、
日本の成り立ちが欧米とは
異なることを示し、
その理解を国民に伝えよう
としたのだ。
それがこの本の目的であり、
その視点が反映されている
のだ。
1942年、清水は
『日本中世の村落』
という学術書を出版したのだ。
この本は日本の村落に関する
専門的な研究であり、現在は
岩波文庫に収められているのだ。
一方、同じ清水が後に出版した
『素描 祖国の歴史』は、
彼自身の学問的研究とは異なり、
日本国民と世界への
メッセージというふうに
受け取ればいいのではないか
と思っているのだ。
清水は『素描 祖国の歴史』で
日本の歴史を考えるうえで
神話から始めているのだ。
歴史学者の多くは戦後、
神話を省略する傾向にあるが、
清水は神話に注目し、
国民性がもっとも反映される
のは建国神話であると述べて
いるのだ。
彼は神話の真偽に関わらず、
そのなかに国民性が表れて
いるという視点をもち、
これを歴史学者としての
意見として強調しているのだ。
清水は次のようなことを
指摘しているのだ。
「多くの国の神話では、
最初にまず天地開闢が描かれ、
天地が出来てからの
ところが重要なポイント
として扱われるのだ。
一方、日本の神話では
そこはそれほど強調
されていないのだ。
あくまで、日本国の国土、
大八洲が形成されたところ
からがスタートになっている」
と。
つまり、日本神話のなか
ではすでに、神の世界、
国土、そして国民の一体感が
表れているということなのだ。
これが日本神話の特徴であると
述べているのだ。
清水は神話学を広く学んだ
わけではないが、この視点
はなかなかおもしろいのだ。
日本書紀や古事記も
天地開闢を以って
始まってはいるが、
何といっても最初に
現れている中心的な
神話はイザナギ・
イザナミ二神が
この国土を生み給たもうた
神話であり、天地開闢の
説はこれに比し、
よそよそしく物語られて
いるにすぎないのである。
大八洲(本州、四国、九州、
淡路、壱岐、対馬、隠岐、佐渡
の八島を指す。日本国の異称)
の国々の誕生こそ、我らの
祖先の関心事であって、
天地や人間のことは二の次
であった。
まずこのことにおいて
吾々の祖先がこの国土を
なにものにもまして大切に
思っていたことがよく
現れている。
次にはこの国土をイザナギ
・イザナミ二神が父母と
なって生み給うたということ、
すなわち国土も国民も
この祖神の血を分けて
生じたということは
他の国には見られない
神話である。
すなわち、神が人を創る
伝説はどこにもあるが、
わが国の如く、
国土も国民も神の生み
給う所であるという
ような神話は他には
これを見ないのである。
これはわが祖先たちが
自分達の住んでいる国土
と自分達人間とを極めて
近く考えたところから
来たものである。
吾々の祖先が深くも
国土を愛していたことに
基づくものである。
遊牧の民の如くその土地
を転々として移る民族に
あってはとうてい成り立ち
得ない神話である。
実に吾々の祖先が古くから
土に親しみ、これと一体化
していた為に生じた神話と
考えなければならない。
なお、わが国古代には
大和大国魂神の如き、
いわゆる国魂の神という、
国土の神が多くあるが、
このように吾々の祖先は
国土を神聖視し、これに
神霊を認め、
これと人間の祖神との
関係を考えたことは、
国土に吾々の祖先は
自分達と同じ血の通って
いることを、実感を以って
感じていた証拠なのである。
思うに国生みの神話を
創った吾々の祖先は
土により育まれることに
よって土の恩を知り、
その土を、また自分の
住む所を、自分達の努力
によって創り上げている
ことを不断にしみじみと
感じていたことからして、
土と人間との不可分離の
関係をはっきり意識して
いたのである。
清水の思想の重要な点は、
国土と住民が一体であり、
その一体感と神との繋がり
を強く意識していることで
あるのだ。
この考え方は、神話を
狭く捉えるのではなく、
より広い視点から捉える
べきだというものであり、
清水は柳田國男の影響を
強く受けていると考え
られるのだ。
続きは次回だ
今日はこのくらいにしといたる