どうも村田です
昭和13年までは歩兵少尉は
「陸軍歩兵少尉なにがし」
と名乗ったが、
昭和13年以降は兵科の
呼称をやめて
「陸軍少尉なにがし」
と名乗るようになったのだ
また、それまでは例えば
経理の人である主計だと、
少尉に相当する主計は
三等主計、
少佐の場合には三等主計正、
少将の場合には主計官、
中将の場合には主計総監、
軍医の場合には三等軍医、
あるいは二等軍医、一等軍医、
三等軍医正、二等軍医正、
一等軍医正、
少将の場合には軍医官、
中将の場合には軍医総監
となるのだ
森鴎外は軍医総監だった
のだ
そういうふうに言っていた
のだが、昭和13年以降は
兵科将校と同じように、
軍医少尉、軍医中尉、
あるいは主計少佐、主計中佐
というふうに、兵科と同じ
階級で呼称するようになった
のだ
現在の自衛隊では兵や軍
という言葉は使えないために、
歩兵のことは普通科と言って
いるのだ
砲兵のことは特科、工兵の
ことは施設と言ってるのだ
陸軍には隠語があったのだ
いくつか紹介するのだ
この隠語についても
知っている人はほとんど
いないから、これについて
説明したいと思うのだ
まず歩兵のことは「バタ」
と言うのだ
これはバタバタ歩くから
「バタ」なのだ
砲兵のことは「ガラ」と
言うのだ
これは大砲をガラガラ
引いて歩くから「ガラ」
と言うのだ
「おまえはバタがちょうどいい」
というのは
「おまえは歩兵が向いている」
という意味なのだ
「おまえはガラ向きだ」
というのは
「おまえは砲兵向きだ」
という意味なのだ
「バキ」という言葉があり
これは「ウマキチガイ」
ということで、騎兵と
いうことなのだ
「少年」というのがあり
これは美男子という意味
なのだ
「あいつは少年だ」と言うと、
「彼は美男子である」という
意味なのだ
今の言葉で言うと
「イケメンだ」ということ
なのだ
女性の美人は何と言うか
というと「シャン」と言うのだ
「おまえのお姉さんは
なかなかシャンだな」
と言うのだ
「ブスケ」というのがあり
これは、どちらかというと
融通の利かない、堅苦しい人間、
あるいはゴツゴツした人間、
柔軟性のない人間という
意味で使うのだ
漢字で書くと「武蔵」
「武士」の「武」に「助」
という字なのだ
これで「ブスケ」と言うのだが、
顔のまずい人のことも
「ブスケ」と言うのだ
現代では女性の顔のまずい人
のことを「ブス」と言うが、
戦前はそういう言葉はないのだ
この軍隊で使われていた
「ブスケ」という言葉が、
戦後、日本の女性の「ブス」
という言葉に転化されたのだ
これはあまり名誉な話では
ないのだ
それから「クスケ」という
のもあり
「スケ」が好きなのだが、
「クスケ」というのは
区隊長のことなのだ
幼年学校や士官学校に入ると、
今で言うと担任の先生の
ようなものだが、
担当者は区隊長と言い
各区隊に入るが、区隊長
のことを「クスケ」と
言うのだ
これはバカにした言い方で
本人の前では言えないのだ
「うちのクスケはうるさい」
というような言い方をするのだ
その上に中隊長がいるが、
中隊長のことは「チュウスケ」
と言うのだ
「うちのチュウスケはやかましい」
というように言うのだ
その上の部隊に行くと連隊長が
いるが、連隊長のことは
「レンコウ」と言うのだ
先生のことを「センコウ」と
言う人がいるが、同じように
連隊長のことは「レンコウ」
と言ったのだ
「スケ」という言葉が
好きなのだ
それから「ペロスケ」という
言葉があるのだ
これはペロッと食べることで
「あいつはペロッと飯を食った」
というふうに使うのだ
「バッカン」、これは
バケツのことなのだ
「エンカン」というものもあり
「エン」は「煙」で「カン」は
「缶詰め」の「缶」なのだ
これは灰皿のことで
「エンカン持ってこい」
というふうに言うのだ
陸軍では「エンカン」と言うが、
海軍では「たばこ盆」と言うのだ
「ブッカンバ」というのがあり
これは物干し場のことなのだ
物干し場のことを
「ブッカンバ」と言うのだが、
今の陸上自衛隊でも物干し場は
「ブッカンバ」と言うのだ
それから「エンカン」も
「エンカン」と言うし、
海上自衛隊は「たばこ盆」
と言ってるのだ
「メシアゲ」、これは炊事場
に行って食事を受け取って
くることなのだ
今で言うと給食当番が給食を
受け取りに行くことなのだ
「○○一等兵、メシアゲに
行ってまいります」
というふうに使うのだ
それから、特に大東亜戦争に
入ってからはそうなのだが、
全部日本語で言うから
襟のことを「カラー」と
言うが、これは
「襟布(えりふ)」と言ったのだ
襟の布なのだ
「ポケット」とは言わず
「物入れ」と言うのだ
「物入れに手を突っ込むな」
というふうに言うのだ
それから、「ゲートル」
も使わないのだ
地方では「ゲートル」
と言ったが、軍隊では
「巻き脚絆(きゃはん)」
と言うのだ
「シャツ」のことは
「襦袢(じゅばん)」
と言い
「ズボン」のことは
「軍の袴」と書いて
「軍袴(ぐんこ)」
と言ったのだ
「ズボン下」のことは
「袴の下」と書いて
「袴下(こした)」
と言うのだ
それから、
「編み上げ靴」のことは
「編上靴(へんじょうか)」
と音読みするのだ
「編み上げ靴」と訓では
読まないのだ
続きは次回だ
今日はこのくらいにしといたる